何でそんなあなたに貯金がないのか
対米不動産投資の中山道子です。この前、子供が、クラスのある同級生に、「あなたには心の中を見せられる、親友よ」と言われてきたというのでびっくりしました。実は、彼女のお母さんは、何らかの神経症の症状があることで中国人コミュニティでは有名。関わると怖いので、子供には、お嬢さんにも近づかないようにと指示しています。
この同級生によると、「大きい家を買ったので、みんなに金持ちと思われているが、実態は違う。でも、そんなことみんなに言えない、わかってもらえない」ということで、普通の態度で接することが出来るうちの子が「心友」ということになったらしいです。
実は、このご家族が、お母さんの見栄から、高すぎる家を買ってしまい、一家が消耗しきっていることは購入直後から私も知っていました。教育熱心なお母さんは、それでも出来のいいお嬢さんのために、数学教室からピアノまで、ありとあらゆるお稽古ごとをやめず、支払いが渋いので先生たちは手を焼いていると、そこまで話題になっているのです。
子供経由で垣間見る世間は、普段、仕事以外では、引きこもりといっても言い過ぎではない私にとっては、超面白い「人間模様ネタ」。いつも、学校(フツーの公立)で起こった話を「教えて、教えて!」と楽しみに聞いています。特にこういう話だと、お母さんヅラをしてお金の教訓を教えることも出来るという。笑
卑近な前置きの話をしたのは、今朝のビジネス上の電話会議がきっかけで、この話を思い出したから。
この前別の記事にも書きましたが、最低必要な衣食住がある程度満ち足りている先進国では、消費は、ニーズや所得相応というより、ちょっと上の人に引きずられ、欲望が先に立つタイプの消費が目立つということでした。(CASCADING EXPENDITURES)
この行動パターンは、個人レベルだけではなく、この前は、「昨今の大学はみな、スポーツチームに多大な投資をしているが、それは、お互い、競争が加熱しあっているだけで、実際その投資が意味のあるリターンとなっている強い大学は限られている、こうしたことが学費を底上げしているが、今後は続かないだろう」というリサーチを見ました。
と、ここからが、今日のトピ。
昨日、ビジネスパートナーから「相談がある」ということで今日電話会議を設定したのですが、内容は、彼の友人で私も知っているあるビジネスマンの融資申し込みでした。
この人は、不動産鑑定業で成功しており、人も何人か使っています。奥さんも鑑定関係の仕事をしていますが、彼は経営者、奥さんは給与所得者。まだ30歳そこそこだと言うのに、デトロイト近郊としては大きな40万ドルの豪邸を構え、既に子供は3人、仕事も家族生活も順風満帆というのですから、はたから見れば、羨ましい限り。私が30歳のときは、東京で独身のアパート賃貸生活、しかも、この年になって子供がいても、ほとんど状況は変わってませんが、、、笑
その彼が、なんと、10万ドルの短期つなぎ融資を受けたいというので、話を聞くことになったわけ。ビジネスモデルとしては、自分が鑑定業の関係でコネができた都市貧困部の物件を格安で購入し、低所得者層に自宅として購入してもらう、自分は、銀行の下請けで、こうした家の鑑定をよくやっているが、ローンは、ちゃんと降りているので、よい副業になると思う、というわけです。
お金を融資するのが仕事ですから、こうなると、単なる友人として「素敵なご一家」と眩しく傍から見るのではなく、いきなり、属性評価に入ることになります。
ビジネスパートナーによると、奥さんは抜きにしても、彼の所得は月収2万ドルはあるはず、家は40万ドルの鑑定額が出ており、一番抵当は20万ドルなので、エクイティはあるので、資産家と言っていい、しかし、この新規ビジネス着手にあたって彼が10万ドルの融資を受けるにあたって差し出してきた担保は、そうした低所得者層向けの賃貸住宅3軒だけだというのです。
デトロイト内外では、数千ドルでこうした物件をキャッシュ購入し、2万ドルもだせば、賃貸レベルの住宅は出来上がりますので、これらの家も、随時ポケットマネーでフィックスアップした物件でしょうが、「3軒で15万ドルになるから10万ドル貸せ」といわれても、額面5万ドルの家を売る手間やコストをすべて計上すると、一軒で15万ドルの鑑定額が出る郊外の家と違い、正直、担保力不十分です。
属性審査といっても、結局は、物件に担保力があれば、金遣いが荒いとか、使いみちが気に入らないなどは別段、問題にならないのですが、ここからは、ちょっと興味本位の家計診断?です。
私の目からすると、ご主人だけで年間20万ドルは売上があり、自宅には20万ドルのエクイティがある、しかも、小さいながら、投資用の不動産物件まで3軒も持っているのに、今、10万ドルぽっち(多分、この家族の生活ぶりからは1年間の生活費で吹き飛ぶ額)の現金の貯金はなくて年率10数%の金利を払ってまでも借金したいのかい、と、これは、正直、健全な家計運用から見ると、黄信号点滅サインです。
もし、所得が十分であれば、自宅に二番抵当としてエクイティライン(フリーローン的なクレジットラインで好きに借りたり返したり出来る)を設置することも容易なはず。金利は、6%とかでしょう。自営業なので、月間2万ドル、3万ドルの売上があるとはいっても、実際にはそれは粗所得で、手元に残る額がいくらか、さらにそのうちのどれだけを申告しているのかは、また別なのかもしれません。
この属性であれば、夫婦がきちんと年金積立をしていれば、そこからSELF DIRECTED IRAで節税投資する手もあるはずですが、意味のある額になっていないのでしょう。
本当にこれらの家が、簡単にフリップできるなら、既にキャッシュ購入しているこの3軒を売って15万ドル作ればいいだけの話でもあります。こういう家を動かすのは結構な手間暇がかかるんですよね。
実は、私のビジネスパートナーは、既に自分は手を出したくないという返事はしたのだそうですが、「MICHIKOにも聞いてくれないか」と食い下がられたというので、しぶしぶ、話を私にも持ってきたということでした。
このご夫婦のことは、私も去年の出会いから覚えているのですが、初対面のときからして、「金遣いの荒さ」が印象的でした。
私と子供でビジネスパートナーが主催したハロウイーンパーティーに行って出会ったのですが、パーティーは彼らみんなが所属する会員制クラブで式場を貸し切り、ベストコスチューマーに千ドルだったかのギフト券がプレゼントされたという太っ腹レベル。
私のビジネスパートナーは稼いでいますから、子供向けのイベントに、一晩1万ドル、2万ドル使おうが、別段、問題ありませんが、私は、その時の彼の話をまだ覚えています。
「実はあの鑑定士夫婦がいつもすごいパーティーをするもんで、お返しに、こっちもある程度やらなきゃいけないんだ、付き合いってやつでね。自分は、毎回こんなことしなくてもいいと思うんだが。」
といったのです。
その時、このご主人も、
「妻がパーティーに使うコストだけで生活が逼迫しそうだよ。本当、半分、やめてほしいってか」
と苦笑交じりに述懐していました。下はその時のパーティーの写真です。
アメリカンドリームの飽くなき追求のコストは、半端ないですね。この仲良しグループのファミリーパーティーBIGGER AND BETTER合戦は、今後、どう展開していくのでしょうか。
こういう生活スタイルが当然と思っている夫婦の場合、例えば奥さんが出産、失業したり、ご主人の鑑定ビジネスが傾いたりして、生活レベルを下げなければいけないとなったら、経済的には破産まで追い詰められるほどのことは無いだろうと予測される反面、他方で、自宅売却、学校転校、持ち回り制のパーティーも参加できなくなりと、本人たちにとっての認識は、完全なメンツ潰れ、”社会的抹殺”になりかねません。
せっかく人口のほとんどよりずっとうまくいっている今だからこそ、欲望充足型消費にある程度歯止めをかけることを学んでほしいと、(親しくはありませんが)隣人としては思いますが、私自身もライフスタイル型の消費こそあまりしなかったものの、若いとき、下手な投資でロスをたくさん出した結果ようやく今に至っているので、人のことはまったく言えませんね。
いずれにせよ、我が家は、、、先代の家訓でお呼ばれのお返しはできませんので、あしからず!(笑)
*********