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Short Sale は虚偽表示! 掲載価格で買えるわけではありません。

昨日は、PCセミナー出席されたある方から、下のような疑問が寄せられました。PCセミナーでは、物件の研究方法の入門編をご紹介しますので、そのスキルを使って見てのご質問です。

「格安で、いろいろな物件が掲載されているのですが、連絡しても、売っている不動産屋さんから、まったく返事をもらえません。」と、、、

私たちの投資先、デトロイトなんかでは、ネットを見ると、1万ドル台から、よさげな物件が掲載されています。500ドル、1,000ドルといった「ぶっちゃけ価格」で掲載されているものは、火事丸焼け物件だったりしますが、もう少し高額になってくると、よい状態に思えるものも多数露出しており、この方は、そうした物件の流通に、興味をもたれたのです。

私自身も、初期には、こうした経験はあります。このブログをご覧になっている皆さんも、向こうは売ることが目的なのに、どうして、返事をもらえないのだろうか?と悩まれる方が、他にも、おいでかもしれません。

今日は、その理由を、ご説明します。

その理由は、ずばり、言ってしまうと、これは、「虚偽表示」だから。

目玉扱いですが、本当にこの値段で売買されることを関係者は、期待はしていないのです。

どういうことかというと、こうした格安物件のうちの状態のよいものは、大半がショートセール(short sale)。

売主と銀行の協力による、任意売却案件なのです。

日本では、任意売却案件は、堂々とREINSに掲載されたりはしないのかもしれませんが、アメリカでは、レアルター(不動産屋さん)が手がけるほぼすべての物件は、MLSに掲載され、一般流通します。しかし、それでは、実際、掲載内容に間違いや過大広告がないかというと、そうではなく、MLSは、単なる露出の場と割り切られています。

ショートセールの場合、売主は、通常、融資を受けたまま、立ち往生しています。デトロイトの例を続けて説明すると、物件のバブル時の相場が、10万ドル、現在の評価額が、6万ドル、融資残高が9万ドルといった状態。

多くの場合は、こういった状態において、オーナーが、銀行に対し、「私はこの融資残高を返済する能力はありません」とギブアップ宣言をするところから、ショートセールの手続きが始まります。このタイプのオーナーは、単なる踏み倒しオーナー、夜逃げオーナー、資産保全のための強制執行をかけなければいけなくなるようなランクのオーナーをに比べると、自分のほうから銀行に率直に相談をして、協力しあって、問題を解決する提案をする覚悟があるという意味で、まじめであったり、将来のことを考えた、ビジネスマインドがあるオーナー、場合によったら、苦境にあっても、自分の立場を最大化することを狙うちゃっかりしたオーナーだったりするのです。

こうなると、銀行は、協力的なオーナーと一緒に、まずは、残債のできるだけ多くの部分について、物件を売却することにより、回収に乗り出することになります。オーナーが、夜逃げしたり、追い出さなければいけなかったような物件というのは、多く、荒廃し、資産価値は激減しますが、この例のように、オーナーが、売却に協力的な物件は、きれいなまま。銀行とオーナーは、こうした物件をまずはできるだけ高く売って、融資の残を可能な限り返済します。

オーナーは、銀行に対し、こうした任意協力をオファーする代わり、「物件を売った後に残る債権は、チャラにしてください」とか、「貯蓄が、5,000ドルだけあるから、物件売却のほかには、5,000ドルだけ払うから、残債は、債権放棄してください」と、交渉するのです。

こうした「残債付きのネゴシエーション中案件」が、「ショートセール案件」。

ショートセール案件では、多くのエリアで、以下のような特徴が、指摘されています。

■「売主」は、銀行との合意でしか動けず、銀行との交渉は至難を極めるため、銀行との交渉に長けたショートセールを専門とする不動産屋さんを立てる必要がある。
■抵当権をつけている銀行が1行しかないならまだしも、2番抵当、3番抵当がある場合、さらに交渉相手が増えて、問題が増幅する。
■掲載価格は、「オークション入札最低価格」のようなもので、実際の売却希望価格ではない。売主は、買主が、相場を細かく調べた上で、「最適なビッド」をすることを期待している。

上の10万ドルだった物件の例を具体的に敷衍すると、MLSに掲載するとき、この物件は、状態のよいままで、「1万ドルから」ということで掲載されたとしても、それは、単に、アイキャッチのためにそうしているだけ。

実際には、関係者は、誰も、「1万ドルのキャッシュですぐ買いますから」といったオファーには興味はありません。

ショートセール案件は、相場より高く売ることはできないでしょうから、どんなにその物件が欲しい買主であろうとも、「現在の相場」である、6万ドル以上のオファーをすることは、ありえないでしょうが、この「公称1万ドル」物件については、銀行は、「物件相場を丁寧にリサーチし、それより少し下」、この物件の例で言えば、例えば、5万ドルといった最高のオファーをしてくる“真剣な買主”を探しているのです。

この場合の銀行の損得勘定は複雑です。融資残高が9万ドルだとすると、強制執行して物件を取り戻すとすると、それ自体に弁護士や裁判所のコストがかかる上、数ヵ月後に占有権を回復した物件の状態はぼろぼろになっている可能性があります。そうなれば、REO物件(銀行保有物件)として、売却により、残債の一部を回収するしかありませんが、”現状有姿、要修理”のREO物件では、期待できる回収額は、9万ドルのうちのごく一部、本当に1万ドルといった額になってしまうでしょう。

それに比べれば、銀行は、売主と、協力して、この物件がショートセールとして、5万ドルで売れれば、まだ、うれしいわけです。ショートセールに出しているのに、アイキャッチの掲載価格である、1万ドルでOKするわけがないわけですね。ここまで、手間をかけて売主と協力する意味がなくなります。

そこら辺の微妙な心情があるため、銀行の窓口は、いくらキャッシュオファーをしても、煮えきらず、交渉を引き延ばす中、highest bidder(もっとも高く値段をつけてくれる人)を、探し続けます。なので、買主のほうから見てみると、ショートセール案件を決済させるためには、3ヶ月、6ヶ月といった期間を経ることが当然となります。

ショートセール案件の購入でうまく、状態のよい物件を購入できる場合も絶無ではなく、カルフォルニアのような一部の州、都市では、ショートセールによる売買が結構盛んだったりするようですが、他方では、「ショートセールなんかでは、絶対話が進まない」といったエリアも多く(例えばネバダ)、後者のエリアでは、ショートセールを得意とするバイヤーズエージェント/レアルター自体を見つけるのに苦労するかもしれません。

いかがでしょうか。不動産広告を見ただけでは、こうした「裏」は、初級者様には、わかりません。

そのため、上の方の場合、「1万ドルなら、細かく物件状況を教えてくれれば、キャッシュで買います」といったメールをしてみても、売り手側のレアルターは、

「こいつはトーシロだな」

としか思いません。アメリカ人は自分の時間を無駄にするのが世の中で一番嫌いですから、こういう場合に、事情説明のメールなんかは出しません。だから、こういったメールは、向こうのスクリーン上では、「秒殺」されているのです。

他の理由として、「真剣な買主なら、buyer’s agent(バイヤーズエージェント。買主側のレアルター)を立てて、不動産屋さんを通して連絡をしてくるべきだ、ということもあります。不動産屋さんが入る取引では、相対取引で双方に不動産屋さんがいないと、話が進まないのです。なので、個人で、売主の不動産屋さんに直接連絡しても、それ自体、「真剣な買い手ではない」という判断を招くことになります。

いかがでしょうか。

不況の現在、good dealは、たくさん存在します。

私のところにも、「アメリカは、そろそろ、来年あたりが底になりそうだから、相談に乗ってください」という連絡が来ることがあります。こうした方は、日本の不動産や投資一般については、知識豊富だったりして、新聞なども研究し、マクロな評価としては、正確に、状況判断をされています。

しかし、実際の投資は、REITやインデックスファンドではないのですから、具体的な投資のロジスティックス、その実際のところを勉強しないと、具体的な案件を正確に評価することは、マクロな情勢判断だけでは、むずかしいのです。あるディールが、「おいしいのか」、どうして、おいしいのか。そういった見極めをするには、自分自身が、米国不動産自体について、日本の新聞には出ていないレベルのことを、相当、勉強をする気がないと、ことがはじまらないことを、指摘させてください。

次回の名古屋セミナーでは、こうした話も、どんどん、PC接続を利用しながら、していきたいと思います。

11月15日名古屋1日セミナー詳細、申し込みは、こちらから。

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