What's in a Deed? 登記書類について
すでに、お盆期間中かと思いきや、一昨日や昨日の環八の込み具合に??だった中山道子です。ひょっとして、この前テレビで解説していた、”ストロー現象”なんでしょうか。(高速が割安になると、都心から地方に行くより、地方から都心に行くほうが、多くなり、都心部が、地方の資源を、ストローのように吸い尽くしてしまうということらしい。本当にそんな言葉は一般化しているのか?)
それはいいですが、実は、時々、オーナー様に、「ある不安」を訴えられることがあります。
それが、登記書類の問題。
柄にもなく、シェイクスピアの What's in a name?(ハムレット) をもじって見ましたが、deed とは、一般的な表現をすれば、名義移転登記書類のことでございます(英米法辞典にどう翻訳しているかわかりませんが)。
遠隔決済で、よくあるのが、「登記が確かめにくい/どこで確認したらいいかわからない」という悩み。
アメリカでは、例によって、連邦制度のため、財産法は、州の管轄。「事情は州ごとに」といういつもの話となります。
一般的に、多くの州は、イギリス法に由来するコモンロー(判例中心の不文法体系)を採用しており、って、そんなところまでは、いいか。
とにかく、アメリカのシステムでは、大陸法的な民法典を最初に作るロジカルなシステムではないため、慣習を法文化する例が多く、結果、州や名義移転方式ごとに、名義移転の登記書類は、名前も違います。
一般に、名義移転書類は、deed、ディードと呼びますが、ディードにも、いろいろな種類があり、正直、細かい差は、私にはわかりません。というか、州ごとに、違うのだと思います。
よくあるのが、warranty deed と言う言い方。Warranty は、保証。旧名義人(grantorという言い方をする)が、名義移転を何らかのレベルで出来る、そういう保証があるということに着目した言い方です。私の投資をしているミシガン州では、この言い方をします。
別のいくつかの州で採用するのが、bargain and sales deed という言い方。バーゲンというのは、日本では、定価割れの格安販売のことですが、英語では、「取引」という意味もあり、ここでは、売買取引証書といった感じなのでしょうか。こちらは、warranty (保証)がないという趣旨を表現する名義書換方法に伴う書類のよう。私がやはり投資をしているネバダ州では、grant, bargain, sale deed と呼んでいます。
他にも、quitclaim deed というディードも一般的で、実は、これは、名義移転書類ではなく、「quitclaimをする人間が、名義に対して権原を主張しない(quit = やめる、claim = 主張)」ということを表現する書類。クイットクレームについては、昔、記事を書いたことがあります。例によって、私って冗漫ですね、、><
さて、以上が、これらの名義書換書類の名前と由来ですが、現在、どの州で、名義書換のどんな法的効果があるかという問題は、まずは、立法、そして、判例法、さらには、よりプラクティカルには、通常、権原保険(title insurance)で、解決しているように思われます。
名前も内容も、いいとして、問題は、この証書が、いつ、お手元に届くか。振込みだけして、証明がこないのでは、「詐欺か?」と悩むことになりかねませんね。
そういう前提で考えれば、理想としては、決済から、1-2週間で、登記当局から、直接、お手元に届けば一番安心なのですが、例によって例によるアメリカ方式。
これも、登記当局(recorder's office)の運営状況によるのでしょうが、たとえば、ミシガン州の場合は、以下の経路をたどります。
■タイトルカンパニーが、登記を手配してくれる。この場合、通常、決済を担当するエスクローオフィサーではなく、誰か一人、担当者がいて、社内の案件をすべて定期的に持っていくシステム。外注の下請け業者さんに委託する場合も多い。
■当局で受付をしてくれる。デトロイト市の場合は、Wayne County Recorder's Office の Registrar (受付)となる。
■しばらくして、登記局出入り担当者が、登記が終わった書類を回収に行く。一軒だけのために毎日確認に行ったりは、、、しないので、大体アバウトに、書類が何枚もたまってから。
■担当者が、社内で、担当オフィサーに、配りなおす。
■担当オフィサーが、顧客に、返送手配する。
私も詳しいことは知らないので、このうちのどの部分が、どれだけの時間がかかるのかは、わかりませんが、上の流れを見ていただければわかるように、ボトルネックはたくさんあり、たとえば、この前の6月半ば過ぎ決済案件のディードは、つい昨日、エスクローオフィサーの手元に戻ってきたようです。
デトロイト市の場合は、それまでは、関係者のオフィスや保険会社にでも電話しまくって、ちゃんと取引の実態があったのか、念を押すくらいしか手がありません。
私も、仕方なく、「名義の書類が来るのは何ヶ月もかかります。オンラインで確認できるようになるには、さらに長くかかりますが、大丈夫ですから」と、まるで熟練詐欺師のように(?)、理屈に合わない説明を繰り返すしかありません。皆様、100%信じてくださるのは、まずいのか、いいことなのか(笑)。
しかも、名義が変わったかが、わからないうちから、納税期限が迫って納税義務が発生したりしますから、困り者。
これは、正直、ミシガン州がダサいからで、たとえば、不動産バブルに、行政が村おこし的にコミットしているネバダ州なんかは、オンラインに名義書換が反映されるのも、時期にもよりますが、1-2週間だったりしますので、信頼性は段違いですね。(詳しいやり方は、対米不動産投資PCセミナーでご説明しています。)
いずれにせよ、このように、いずこも同じかもしれませんが、米国の不動産取引は、「不合理なことだらけ」。
たとえば、私が、荒稼ぎしたければ、上の事情を逆手にとって、各種書類をそれらしく作成し、単に国際的な振込み詐欺をバンバンやれば、結構、2年くらい、自転車操業できそうな気がします。(これを読む方も、変なこと考えないでくださいネ><)
なので、とにかく、国際取引は、信頼できる現地パートナーに任せないと、大変なことになります、ある程度のリテラシーやチェックスキルは、必要になるはずですと、付け加えさせていただきたいと思います。
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