ライフスタイルの変遷を理解する アメリカ Garage(車庫)編
今回は、ちょっとゆるいテーマで、ライフスタイルの変遷が、不動産に及ぼす影響。実際に経験しないとわからないかもしれない部分です。
私は、不動産投資英語塾というSKYPEの授業を主催しており、ちょうど今日、そのレッスンがあったのですが、そこで、不動産鑑定の手法について、教材を読むこととなりました。英語塾については、こちらから。4月から、また新しい回が開始です。但し、教材は、2011年9月開始のものの途中。
私自身、こういうことを手がけるのは、不動産関係の英語が、とても専門化された領域で、普通のビジネス英語を学んでいるだけではカバーできないということを実感として知っているからなのですが、(普通の英語のネイティブの先生には教えられない授業をやっていると自負しています)ちょうど、米国に行きだした頃に、米国のライフスタイルを、あまり理解せず、投資をやっていた自分を思い出しました。
投資の最初の頃は、私は、米国で、家に車を置いて、会社に行くといった「普通の米国人の」生活をあまり経験したことがなく、いろいろな家を見せてもらっても、ポイントがつかめず、ぼんやりしていたものです。
今回、ガレージに着目しながら、米国の家屋の変遷をたどっていきたいと思います。
理由は、米国には、築50年、100年の家が、いまだ、現役として存在しているから。こうした中古市場は当然、長期ホールディング型の投資家にとっては、大変頼もしい味方なのですが、古い家には、「直そうとして直せない」フィーチャーもあり、ガレージなどは、その際たるものなので、こうした利便性の差が、どうやって出るのかといったことを、感じ取っていただければ、、、
■■ガレージのデザインや位置づけの変遷■■
そもそも、車が普及しだすのが、1920年代。最初は、みんな、ガレージがなく、納屋(Barn)や馬車置き場(Carriage house)に車を置いていたらしいです。
当然、その後、建築家たちは、車を専用に収納するための車庫というコンセプトを生み出します。
しかし、多くの場合、過去のガレージは、
■別建て detached garage
■出入り口がない 家に付属しているのに、家に入るのに、一度、外に出なければいけない
タイプでした。ガレージのドアも、手巻き式。冬なんか、まず、ガレージに車を入れるために、ドライバーまたは助手席の人間が一度外に出て、ドアを開け、車を入れた後は、家族全員で、ガレージから一度出て、買い物袋を持って外気にさらされながら、ガレージ脇のお勝手口から入る、、、なんて感じだったのですね。
現在、私たちが投資をしているデトロイトの一戸建て物件は、いずれも、そんなタイプのガレージです。
実際の物件例(築1950年の3BR1BA案件)↓
当然、これは、今の目から見ると、不便。それに対し、1940年代から、徐々に、家に直接出入りできるような、現代式のガレージが出てき始めたらしいです。
さらに、電動のガレージオープナーが発明されたのが、1937年だったそうですが、これが普及するのが、1970年代。
1980年代になると、女性の社会進出というべきなのか、シングルインカム世帯の貧困化というのかわかりませんが、共働きが一般化し、夫婦が、車を2台持って、それぞれ、職場に行くという行動パターンの普及に伴い、ガレージも、サイズアップします。
こうした変遷を経て、現代の「中産階級が居住するモダンな家屋の一部としてのガレージ」、つまり、
■車が2台(SUV対応)入る家の一部に付属しているガレージ
■電動ガレージオープナー
■家に入るとそこは、スグにキッチンやパントリーで買い物袋を下ろせる
という仕様やフロアプランが完成し、2012年も、これが理想のワーキングクラス向け家屋のガレージのスタンダードといってかまわないのだと思います。
■■■■
さて、しかし、実際の物件は、いろいろな築年数のものが、いろいろな状態で残っており、ガレージの観点からだけ見た理想の家が、希望エリアにドンピシャリの価格帯であるとばかりも限りません。
この物件も、デトロイトでの当グループオーナー様の投資案件です。これは、奥にガレージがありますが、そのほか、家の勝手口の前のドライブウエーに、オーニング(ひさし。awning)をつくり、そこに車を止めて、雨にぬれないで出入りできるようリフォームしています。これは、利便性は高いリフォームかと思います。オーニングがない物件と比べても、多分、鑑定額は、そこまでは、変わらないとは思いますが、人気は出るだろうと思います。
古めの物件は、別建てガレージがなくなっているものも多く、投資の場合は、ガレージを建て直すコスト投入が、通常は、正当化できないことが多いと思います。
私がラスベガスのストリップに一時持っていた区分所有物、マンションの一室は、1970年代のもので、ガレージは、まだ電動ではなく、巻き上げ式でした。そうしたガレージを電動式のドアにリフォームすることも、可能ですが、投資だったので、特に、そのような意味はありませんでした。
特に、ベガスは、雨があまり降らないので、カーポート(屋根つきで壁がない駐車場)でも問題がなく、そのマンション内では、多くのマンションユニットのオーナーたちは、カーポートを使っていて、ガレージは、購入していなかった状態。エリア的に、ダウンタウンで、昔から開発が進んでいたエリアで、周囲は、近隣の築浅の物件は、まったく違う値段で売られていたので、そのようなガレージでも、購入しているだけで、価格帯内では、差別化になっていて、そのため、「旧式ガレージ」は、問題にならなかったわけです。
それに対して、現在でもベガスでホールディングしているタウンハウスは、自称2カー、もちろん電動式なのですが、実際にはSUVが入ると、二台目NGの微妙なガレージサイズの物件。この物件があるあたりは、バブル時に建てられた似たような物件やもっと高級仕様の物件が多く、前述のマンションの旧式ガレージは、「プラス要因」であったのに対し、この物件は、エリア内では、こういうガレージでは、「下」ランク評価になると認めざるを得ません。投資初期、2004年次の購入で、それほど見る目がなかったのは自分の責任。この物件は、依然、金利のみ返済をしているだけなので、実は、ポジティブキャッシュフローしており、まあ長い目で見るしかないかなと思っています。ちょっと大きな声では言いにくいですが、正直、今多くのアメリカ人が行っているように、戦略的デフォルトをする可能性も、自分の中では、想定しています。
脱線しましたが、いずれにせよ、このように、皆さんが、物件視察に乗り出すと、ガレージに着目するだけでも、対象物件が、
■ガレージが1台分しかない
■ガレージは自称2台分だが、今はやりのSUVだと2台入らない
■ガレージが別建て
■ガレージがなく、路上駐車
■カーポートしかない
といったいろいろなバラエティにとんだ対象物件を目にすることになります。
こうした物件の微妙な差は、自分が住むなら、相当な意味がありますが、投資の場合は、賃貸可能性という範囲で処理すればいいので、当面は、そこまで問題にならない場合があります。
但し、エグジットの場合は、実際の内見で人気が出るかでないかは、こういったフィーチャーの積み重ねによることになる場合も多いわけで、遠隔にいると、そこら辺は、なかなか、実感としてわからないところが多々あります。
こういう場合、やはり、現地のレアルターさんや管理会社さんに、現地の方々の居住環境を教えてもらい、それに応じて、世話をしてくれる方に任せる部分が多々出てきます。
デトロイト投資の場合、現地の物件価格はあまりに安いので、築浅物件は、ほとんどありません。
バブルのときでも、建築コストのほうが、中古物件購入コストより、ずっと高かったのです。このため、今のスタンダードである、「ガレージからキッチンにそのまま」という物件は、ほとんど、競合として想定する必要がないわけです。
そして、実際の利用方法に目を転じてみると、現在、現地では、多くの方が、ガレージは物置に利用し、車は、なぜか、ドライブウエーに止めたり、路駐したりしていて、ガレージは、本来の形で利用されていません。
昔と違い、車の利便性は高まった半面、その価値は低まっており、奥にしまいこみ、鍵をかけて大切にして、日曜日の教会行きのようにj、たまに持ち出してくるという意識、ライフスタイルは、有効でなくなっているのでしょう。
電動式へのリフォームも、ほとんど見ません。雪が降るエリアなのにと思われるかもしれませんが、デトロイトエリアの雪は、それほど積雪するほどには至らないレベルで、冬は、現地では、シャベルカーは、割合スグに来てくれるので、逆に、ドライブウエーに浅く乗り上げておくほうが、雪かきの手間も、ガレージのあるドライブウエーの奥までやらないで済むような気がします。総合的にいえば、物件価格は、バブルのときでも、10万ドル以下のエリアですので、数千ドル単位のガレージ電動式へのリフォームを正当化するような価格帯、世帯分布ではなく、「あまり回収できないコストをかけるより、このままで」的な状況なのかと思います。
デトロイト物件のガレージ事情をさらに、突っ込んで研究しますと、ガレージが、物置にしかならない場合、それでは、ガレージがないと、物置、収納スペースの少ない家として、物件の魅力が半減するのかという問題が次に出てくるかと思いますが、実は、これらの家は、大体、一階と同じサイズの地下室があります。そのため、よほど狭い家でなければ、「外にある物置」より、「地下にある一階と同じ大きさの物置」のほうが、便利だといえます。
なので、相当大きいものを持ち運びしたくて、階段が狭い等の理由で、不便だという場合以外は、別建てガレージしかないこと、さらには、そのようなガレージがないことは、現地では、どちらも、そこまで決定的な要素にはなっていないように見受けられます。
もちろん、個別事情として、ガレージの中で作業をすることが好きな方や、自営で、トラックを持っているような方など、状況はいろいろ。私がシラキュースに持っているある物件なんか、たまたまですが、3台分のスペースの巨大ガレージがあるのですが、テナントさんは、車をドライブウエーにとめていて、ガレージを使わないので、地元の自営業者さんの作業スペース/物置用に、別途に貸し出しています。なので、ここで述べる分析は、あくまで一般的なレベルの話です。
これに対し、築浅物件が多いエリアで、周りのバブル期の物件の作りは巨大・ゴージャスで、しかも、みなショートセールに出てしまっているような場合、より古い家で、ガレージの仕様が小さいまたは古いというのは、より大きなマイナス評価となってしまうかもしれません。
よい地元エージェントというのは、こういった要素をいろいろ瞬時に計算し、家のよしあしを総合的に判断していきます。ガレージひとつとっても、相当な背景があるわけで、このほかに、もっといろいろなポイントがあるということは、いうまでもありません。
また、丁寧な不動産鑑定(アプレイザル、appraisal)の場合、こうした要素が、いちいち細かく勘案されていきます。そのため、本来の価値評価は、機械的なレベル(ZILLOWやTRULIAなど)では、どうしても、行き届きません。(ちなみに、最近よく利用されるこれらのサイトは、間違いも多いので、それほど評価するべきではありません。固定資産税額といった相当はっきりしているデータなんかでも、普通に間違っています。なので私自身は、このサイトでは、これらの情報は、それほど取り上げてきませんでした。ないよりいい場合があるかもしれませんが、無料情報で、データ収集方法に、広告主の意向に左右されているのではないかと思う場合もあります。)
不動産の評価には、機械化しにくいヒューマンファクターが大きいのですね。
このように、あるエリアを理解するのは、なかなか、1、2度の視察では難しいというのは、こうした実際のライフスタイルや家の使い方をこちらからでは、わかりにくいといった事情もあります。私自身、何年にも渡り、いろいろなエリアを視察し続ける中、毎回、プロフェッショナルを呼んで、通訳をしながら、実地で学んでいったことも多いです。
ずいぶん前から、ネットで、日本からの遠隔投資は容易で可能と大きく言い始めたのは、私ですが、実際には、それは、ちょっと極端な物言いで、「出来るけれど、それには、条件がたくさんあり、そのひとつは、現地の担当側が、信頼できること」が必要。
私のお世話をしているオーナー様も、多く、忙しいからと、遠隔で、ハンズフリーな形で投資に着手をされますが、余裕がある場合、視察に来てくださることも多く、こうした形で、ステップバイステップで、楽しみながら、投資家として知識を得ていくのは、大変いいやり方だと、そういう成長の仕方が出来なかった自らの初期の投資家ライフを振り返るにつけ、しみじみ、思います。その意味では、自分の初期の間違いを犯さないよう、多くの方のお手伝いが出来るようになっているのは、自分にとって、大きな意味のあることです。
ちなみに、今年は、グループ視察としてははじめのシカゴ行きを決めています。
ダウンタウンの物件を中心にし、郊外は行かない予定ですが、大変楽しみです。(アメリカ不動産投資視察旅行概要)
*********