HOME > 投資戦略 > 

非定型取引の決済書類の確認は怠れません(2)

非定型取引の決済書類の確認は怠れません(1)の続きです。

概略

私が持っている物件の賃借人に、物件をLAND CONTRACTで売る契約をした。その際に、私の方も、相手の方も、弁護士を使い、LAND CONTRACT書類に合意をするにあたっては、それなりにやり取りをした。しかし、弁護士が決済代行会社に提出をしたはずの書類が、決済書類確認時には、いつの間にか、差し替えられており、最後に焦った。

==

ランドコントラクトについて、より細かく知りたい方は、こちらの投稿をご覧下さい。上級者向けの投資戦略です。このブログを読むと、「勉強になる」と思われる方は、ランドコントラクト契約などは、されないでください。

さて、ここから、一連の取引の流れです。

===

2016年3月25日 
MEMORANDUM OF UNDERSTANDING締結。

この段階で、ランドコントラクトの契約内容を確認するメモランダムという形式の文書に双方がサイン。ランドコントラクト自体の締結は、名義の瑕疵問題を処理するため、このときはできないという状況で、各種条件の他、購入が最終的に成立する元本支払いの期日は、「2016年3月25日のメモランダム署名日から38ヶ月」、つまり、2019年5月という日取りが確認された。

2017年3月 
名義瑕疵の治癒を受けて、ランドコントラクト契約自体締結に動く。

2017年3月21日付決済書類確認
決済代行会社が用意したCLOSING DOCS(決済一式書類)を弁護士と私が確認。私の弁護士が起草したランドコントラクト契約が、その中の主要書類となる。ランドコントラクト契約上、前年のメモに従い、あちらは、毎月金利を払い、最終的に、元本支払いと名義譲渡が、「メモランダム署名日である2016年3月25日から38ヶ月目」、つまり、2019年5月に行われるとされた。

2017年3月25日
決済代行会社がCLOSING DOCSを更新し、買い手側は、この更新された25日付けの書類にサインをした。

2017年3月26日
同じ書類に、私が今度は売り手として署名をするため、決済代行会社に赴く前に、25日付の更新書類を確認したところ、21日付けと異なり、なんと、決済一式書類の中のランドコントラクトの契約条件が、「メモランダム署名日である2017年3月25日から38ヶ月」、つまり、元本支払いと名義譲渡が、2020年5月予定にすり替わっていることを発見!

同日、決済代行会社に電話し、アポのキャンセルとともに事情説明。ブローカー、弁護士にも電話をしたところ、弁護士は、「どうして自分が作成した書類の内容が変わっているのか?買い手の弁護士の差し替えか?」と疑心暗鬼に。

この段階では、書類を訂正することはもちろんだが、本来締結するべき書類に、買い手がすぐ再度サインをしてくれないと、たいへん揉めるのでは、と大いに不安になる。

2017年3月31日
弁護士と連絡を取りながら、決済代行会社に行き直し、待機。幸い、買い手の弁護士が、「2016年3月25日から38ヶ月」というふうに、書類の該当箇所をもとに戻し、買い手のサインを貰ってくれた訂正版のページを、ファックスしてくれた。その段階で、私も書類にサイン。買い手側が振り込んだ固定資産税や保険の費用などを早く払い込むように決済代行会社に指示をし、金曜日の午後6時に帰路につく、、、

===


蓋を開けてみると、事情は、以下の通りでした。ややこしくてすみません。


双方で、ランドコントラクト契約自体の内容は登記をしないことに合意したため、私の弁護士が、ランドコントラクトの存在を登記するための定形書類である、MEMORANDUM OF LAND CONTRACTという書類を作成するように決済代行会社に指示をした。

これは、ランドコントラクトがある旨を登記したいがランドコントラクト契約自体を登記したくない場合に、登記する書類。平たく言うと、この書類は、「この物件は、これこれの相手との間に、売却予定契約がありますよ、他の人は買えませんよ」ということを公示するために作っただけなわけです。

この結果、偶然、去年締結したメモランダムと似た書類ができてしまった。つまり、これらの書類は、内容は全く別物なのにもかかわらず、タイトルが、両方、MEMORANDUMである他、去年締結したMEMORANDUM OF UNDERSTANDINGは2016年3月25日付、こちらは、2017年3月25日付と日付まで似通っていた。

こうした中、決済代行会社の担当者は、私の弁護士から、ランドコントラクトの草稿をワードドックでもらい、ざっと見たところ、2016年3月のメモランダムがメンションされていることに最後の段階で気がつく。

彼女は、なぜか、「あら、ここにメンションされているメモランダムという書類は、私が今週作った書類じゃない。それなら、今年の3月25日に締結するのであって、去年の3月25日に締結したとあるのは、記載間違いね」と2つの書類を混同。「2016年」とあったのを、「2017年」と、数字をひとつだけ、変更。つまり、弁護士の草稿に手を入れてしまった。

彼女は、単なる法律事務屋さんで、自分自身が投資に詳しいわけではないので、その結果、

「メモランダムOF UNDERSTANDINGの署名日である2016年3月25日から38ヶ月後に買い取りを完了すること」

と読むべき文書が、

「メモランダムOF LAND CONTRACT署名日である2017年3月25日から38ヶ月後に買い取りを完了すること」という文書に劇的に変わってしまったことを認識していなかった。

つまり、この日付訂正により、ランドコントラクト書類を読むと、「買い手が元本を最終的に振り込む期日が、1年ずれてしまう解釈を生む」結果を導いてしまった。

このランドコントラクトにサインをしてしまっていたら、ひょっとすると、2019年5月に、「元本払ってください」と言っても、「いや、来年にしようかな」と言われてしまうところ。名義譲渡の日にち自体が、1年変更され、その間、2019年から2020年にかけては、私は、利息は全くもらえない、という状況になりかねませんでした。

私も、最初は、弁護士に高額の顧問料を払っているのだから、安心していいと思いこんでいました。しかも、21日の書類は読んであって、それは合っていたのです。弁護士は、25日に買い手がサインをしたときは、私の代わりに立ち会ってくれていました。その場で彼が、買い手のサインする内容に、最終確認をするべき義務があったとはいえます。

決済代行会社が契約自体を変えてしまい、そこから、買い手との間に揉め事に発展していたとしたら、実害が出るわけですから、決済代行会社をも訴えることにならざるを得ません。私の顧問弁護士のことだって、注意義務違反で、訴えられたでしょう。

しかし、大事な非定型取引なので、決済代行会社に行く前に、一人で最新更新書類を眺めることで、決定的な失敗を免れることができました。どうしてもオフィスで人に応接されながら書類を確認すると、気が散ります。虫の知らせに素直に応え、一人で引きこもって書類を読み込んで、本当に良かった、、、


これまで何百件も決済を経験していますが、普通の売買契約ならば、タイトルカンパニーは、定型契約に従って采配をするだけ。やり取りが単純なので、間違いの余地というのは大きくありません。今回は、経緯や契約自体が複雑で、普通の売買よりレアケースだったため、やはり、お互い相当なプレッシャーでした。

このタイトルカンパニーは、いつも世話になっている付き合いの長いところで、格安フィーでいろいろな無理がきく相手。貴重なビジネスのパートナーを失う羽目にならず、本当に良かったです。

私がアラートした後には、私の顧問弁護士も、タイトルカンパニーの担当者も、問題解決には大いに尽力してくれましたが、ただ、こういう事態になった事自体については、別に、謝ってもくれなければ、お礼も言ってくれません。これが、アメリカという国ですので、自画自賛のブログ記事でも書いてよしとします。笑

決済代行会社が、契約書の草稿に手を入れるというのは、ちょっと聞いたことが無いと、周囲の投資家にも言われましたが、いや、10年やっていても、新しい経験というのは、出て来るものですね。。。

中山からのお願いです。
記事がお役に立ったら、下の2つのボタンをクリックし、ブログに投票してください!
人気ブログランキング にほんブログ村  海外生活ブログ アメリカ情報へ
ご協力お願いします。
中山道子メルマガ登録URL
お名前
Eメール
Eメール(再)

ご登録は無料で、解除は、随時可能です。
最近の配信例は、こちらから。大体、月1度くらいの配信です。

*********

メール配信解除
ご登録のメールアドレスを入力し、解除ボタンを押してください
登録メールアドレス

≪ 一つ前のページに戻る ≫


このページの▲TOPへ戻る