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Public Housing Voucher とは?

対米遠隔不動産投資家の中山道子です。米国へ、外国人が効率的に投資をする場合のテクニックやポイントについてのブログやセミナー活動もやっています。

このブログを読んでくださる方は、日本のみならず、アメリカ在住の方、そして、不動産関係のプロの方も多く、時々激励のお便りを頂戴すると、私もうれしいです。

この前は、こんな方からお便りを頂戴しました。

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 はじめまして。この11月に☆☆州のreal estate sales personの免許をとろうとクラスを受講し、来週state testを受けるべく、勉強している者です。
 勉強するにあたり、辞書だけではまるでわからないことだらけなので、ネットで検索していく中で中山さんのサイトにきました。
 ご自身でも書かれてますが、普通だったら無料で提供されえないような情報や、ご自身の経験談など、これからアメリカで不動産業に身をおくものとして、参考になることばかりで、先にお礼を伝えたいと思いました。今はとにかく試験勉強が優先なのですが、終わったら、過去の記事や動画もどんどん目を通したいと思っています。

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プロを目指す方にも役に立っていればうれしいですね。テストがんばってください。

さて、今回は、日本でも昨今増えてきた低所得者層・福祉受給者向け不動産投資という手法について。私のお客様でも、実は、国内で、シングルマザーといった方々への賃貸を展開しているオーナー様は、おいでになります。

こうした層の方々は、一般的なプロフィールとしたら、転勤をしたり、居宅を購入したりといった行動もなく、比較的流動性が低いので、その意味では、子供を育てる間、長い間、丁寧に、一箇所に住んだりといった行動を取られる場合も、日本では多いのだろうと思います。私は女の一人親の癖に、転居ばかりですが、、、

私自身も、米国で、低所得者層向けの投資に目覚めたのは、2006年くらいのことで、この時期、一度バブルでとった上がりをどうやって再投資しようかと思ったとき、再度値上がり狙いはきついなということで、バリュー物件に目を向けたところ、こうした賃貸戦略に行き着いたというわけです。

下層の人に厳しそうに見える米国では、実は、日本にもまして、いろいろな福祉の手が差し伸べられており(足りているかどうか、効率的がどうかは別として)、実際に福祉を受給されている立場の方は、はたから見ると、受給対象から、ぎりぎりはずれるようなワーキングクラスの下のほうの方々に比べると、結構ゆとりを持って暮らしているように見えることもあります(もちろんそれは一面的な見方だとは思いますが)。

ということで、ここで、タイトルに、Public Housing Voucher という言葉を使いましたが、直訳すると、ハウジングバウチャー、つまり、住宅補助手当て受給券、といったようなイメージでしょうか。バウチャーというのは、翻訳しにくい言葉なので、日本でもそのまま使っていることがありますが、日本では、「ホテルの朝食に使うバウチャー」とか、「ホテルの宿泊券バウチャー」のようなものでしか、使わないコンセプトかもしれません。

それで、どうして、米国では、公共政策において、バウチャーが必要になるかというと、それは、米国において、日本と異なり、パブリックハウジング(公団などの低所得者層向けの住宅政策)というセクター自体が、それほど発達していないからだろうと思います。

米国では、これは、州主導で、場合により連邦の補助も受けて、行われるものではあるのですが、第一に連邦マターでないので、各州の自覚に任されるため、一律どこでも同じような制度があって、それが十分いきわたる、というイメージにならない上、第二に、歴史的に言って、ニューヨーク州やイリノイ州(シカゴ)など、多くの低所得者層を都市部に抱える州で、過去に、パブリックハウジング(公団)を作ってはそれらがスラム化してしまい、失敗して、その後、都市政策として、「貧困者層を、それとして隔離したような住宅政策を作ること(結果からいうと人種的な色合いも色濃かった)」に、消極的にならざるを得ない状況というものが、生まれて久しいのです。

その代わりとして発達しているのが、ハウジングバウチャー。これは、一般的には、連邦が直接財源を受け持ち、州にかかわらず、発行しています。この規定を定める条項の名前を取って、通常、セクション8(Section 8、セクション・エイト)と呼ばれています。

連邦支給ですが、各州に受け付ける事務所があり、申請はこうした事務所単位。その実際はということで見ると、私も詳しくはないのですが、

受給資格
■収入制限
■犯罪歴がないこと
■どのサイズの家の賃料をどれだけ負担してもらえるかは、家族の構成員の数や収入で決める

などとなっており、新規に受け付けてもらうのは至難の業である反面、すでに受給している家庭では、既得権化して、場合によると「相続」に近いような実態があるようにも聞いています。


低所得者層向けの投資をする場合は、管理会社が、こうした役所とのやり取りに、相当通暁していく必要があります。

また、米国というのは不思議なところで、いろいろな財団があって、そうしたところが、政府の領域と思うようなところで、ずいぶん活動をしている場合もあるので、こうした民間団体のチェックも欠かせません。

いずれにせよ、今日、飛び込んできたニュースは、

「シアトル在住のあるカップル、長年、ハウジングバウチャー他各種福祉受給を受けつつ、120万ドルの豪邸に居住し、海外旅行や寄付に散在!連邦政府の調査を受けるも、まだ犯罪立件されていないため、匿名扱い」

という、「日本でも問題になっている?」受給資格濫用問題について。ニュース源はこちらから。


++原文こちらからコピペ

by CHRIS INGALLS / KING 5 News
Bio | Email | Follow: @cjingalls

Posted on December 2, 2011 at 6:16 PM

Updated Friday, Dec 2 at 8:26 PM

SEATTLE -- She lives in a beautiful waterfront home on Seattle’s Lake Washington. Yet, she's on welfare assistance.

This week federal agents moved in to put a stop to it. They raided her south Lake Washington home armed with a search warrant.

KING 5 News is not naming the woman or her husband because they have not been criminally charged.

Search warrant documents unsealed Friday in federal court reveal that she received more than $1,200 a month in public housing vouchers, plus monthly cash from the federal and state government for a disability, as well as food stamps.

Property records show the woman lives in a 2,500 square-foot home, with gardens and a boat dock, that is valued at $1.2 million.

Records show she has received welfare benefits while living in the plush home since 2003. Records also show she truthfully provided her address when she applied for benefits.

How could the government allow housing subsidy dollars to someone who openly lives in one of Seattle’s most desirable neighborhoods?

A federal official spoke to KING 5 News on condition of anonymity. He says the housing voucher program provides coupons that help low-income people pay their rent. He says it allows people to get out of housing projects and move into the place of their choosing. However, he says a “flaw” is that the program doesn’t analyze where people are living, even if it is at a ritzy address that should raise a red flag.

Court records show the couple gave money to charities and traveled around the world to exotic places like Turkey, Tel Aviv and resort towns in Mexico.

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日本でも、福祉を受給しながら、パチンコに行ったりする人がいるといって、こうした制度に懐疑的な方もいますが、あれはあれで、ギャンブル依存症とかなのでしょうか。

いずれにせよ、この受給者は、住所を偽ったといったことはなく、なぜか、この住所に住みながら、1,200ドルの家賃補助(やその他の受給)を受けていたということで、報道では、「連邦のやつらって本当に」と、例によって政府の”お間抜けぶり”に焦点が。

私の承知しているセクション8の制度では、ハウジングバウチャーがある受給者は、好みの家を選び、その家主と契約、その上で、検査士が派遣され、選らばれた家またはアパートが、居住適格であるかのインスペクションがあって、それに合格してから、最後に、ケースワーカーが役所と家主との契約を確認し、家賃支払いの小切手が、直接、家主に届けられることになるというもの。

この制度からいえば、この家が、この夫婦に対し、本当に、1,200ドル程度で貸されていたというなら、特に、それだけでは、問題とするべきではありません。

というのも、この報道局の言っている様に、なんとなく腹は立つという気持ちは私にもわかるのですが、冒頭にて振り返った過去の歴史で、連邦は、スラム問題を解決するために、福祉受給者に、「ここにみんなで住め」(結果からいってcontainmentとなってしまった)と指示することをやめたという背景があったわけですから、その逆のロジックで、「好きなところに住んでかまわない。社会には、diversityが必要なんだ」という現在の都市計画的な思想に基づき、金持ちの近くに居住する権利を最大限に行使したこの夫婦は、それだけなら、連邦の指図を受けるいわれはないはずだからです。

ただ、この受給者たちは、海外旅行や寄付行為など、「リッチな暮らしぶり」をしていたということですので、そこが、単なる債務破綻行為、借金につぐ借金をしていただけというより、実は、何か巧妙な資産や収入隠しがあって、受給申請書に虚偽表示があったでしょうね。

さらに、ここでは明記がありませんが、家の名義も、LLCや信託を使って、裏では、自分たちで買っていたとか、、、そうとなれば、ハウジングバウチャーは、連邦給付なので、当然、連邦のエージェントが、乱入することになります。ちなみに、もし、家を買っていたとして、それにあたり、融資を受けていたとしたら、融資申請書類と福祉受給申請書の記載には、齟齬があるでしょう。融資申請書類のほうも、連邦統一書式で、そっちだけでも、やはり連邦マターなのです。

実は、セクション8のバウチャーの家賃って、都市毎の市場相場より高めなことも多いので(例えば、デトロイトなら、3BRだったら、市場相場どおりの650ドルから始まり、上限は、水道代家主負担付という場合なら、800ドルといった額になることもありえます)、古めの償却した物件を回すためには、それなりに意味がある制度なのですが、他方では、賃貸の客付けが多少苦戦しているからといって、ワーキングクラスのエリアで、気軽にやるようなものではありません。

というのも、こうした福祉受給者の中には、受給資格自体はあっても、居住態度がよくなかったりといったトラブルメーカーも多いから。

アメリカのテナントプロフィールは、日本の低所得者層、シングルマザー層の典型イメージであるらしい、「トラブルを起こさないで、ひっそりと、ずっと住んでくれる」というようなものではまったくありません。こういう福祉受給者には、よく、いわゆる「子供の父親やカレシ」「子供や甥」などがぶら下がっていて、(significant other や家族がいること自体は結構なことですが)そういった周りの親しい男性が、犯罪に手を染めていたり、トラブルの種になったりといったパターンも時々見かけます。(社会的不正義の問題も絡むでしょうが、一般論的に、統計からいうと、米国では、若年黒人男性の犯罪者率は高い)

掃除がいやなばかりに、半年ごとに、物件を借り換え、引越し後には、ごみの山が残されていくといったような武勇伝を聞くことまでありますから、地域や状況によっては、管理会社が、絶対NOという場合もあるでしょう。

どんな投資戦略でもそうですが、ここでも、エリアごとに、実態や投資物件との適合性を確認していく必要があります。

ちなみに、他に、関連トピックとして、
フードスタンプとは(こちらから)
UR都市機構に理念はあるのか(こちらから)
といった記事も過去に書いたことがあります。

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