修理について Some Thoughts on Repairs
2007年から対米不動産投資についてのこのブログを運営している中山道子です。《この記事は、2015年3月に手を入れました。2015年現在、「銀行関連の債権処理物件の数」は、これを当初書いた2012年と比べ、平常化しつつあり、2015年1月次の全取引における比率は、11%でした。2015年3月30日追記》
今日は、イマドキの修理について、見てみましょう。2012年の現在、多くの「お買い得物件」というのは、要修理が必要な状態。
これを、
現状有姿、as is
といいます。
銀行がらみの案件、つまり、任意売却または、銀行が差し押さえをした後に転売をする所有物件にオファー(purchase offer, 買い付け証明)をかけていく場合は、現在、通常、
as is
でかまわないという事前了承が書類で必要になります。これは、"as is" addendum, riderなどと呼ばれます。アデンダムは、通常、契約書への追加条項、ライダーは、通常保険に使われる言葉ですが、ここでは、アデンダムと似た意味で使われるようです。
買い付け証明前に、当然、事前に立ち入れますが、ただ、実際に契約をしてからでないと、建物検査(property inspection)はできません。
建物検査は、独自の業者さんにやってもらいます。
なので、立ち入ったときに、
1)大体、目視で、修理予算を見積もる
2)契約後の建物検査の結果を見直して、再検討。
→ ここで買うのをやめてもいい。
3)購入後、修理をして、賃貸なり居住なり転売
4)購入後、それでも見つからなかったトラブルに対処する可能性
→ 現状ものは、どんな場合でも、100%回避することは無理
といった流れになります。
建物検査は、現在の米国の不動産取引の7割、8割で行われていますが、売主にとっては、「as is で、建物検査で勝手にやってよ」というのは、楽な売却方法。
初級者が気をつけなければいけないのは、建物検査で、どういうことがわかるかと、どういうことはわからないのかを確認する作業。
私自身、過去に、200軒以上の建物検査を確認してきましたが、エリアや工法により、ポイントは異なり、正直、最初の数軒の売買で、検査報告書を見て、自分に、何かがわかるとは、思わないほうがいいです。
結局は、不動産屋さんのアドバイスを受け入れることになるでしょうが、注意点として、不動産業者さんは、建物検査の内容を精査し、プロとしてのレベルで、それに基づいて、発言をするようなトレーニングを通常受けていません。
なので、銀行相手のプロセスでは、普通の仲介さんではなく、銀行関連物に習熟している不動産業者さんと付き合う必要があります。
2006年くらいまで、多くの不動産業者さんは、
■新築案件
■一般のオーナーチェンジ案件(普通の中古)
だけしか、知識を持っていませんでした。
そうした案件を専門とするのは、「玄人筋の投資家相手」のベテラン業者さんだけだったのです。
それが、米国では、2009年くらいからは、市場は、多くのエリアで、
Short Sale (名義人が融資銀行と一緒に任意売却)
REO(Bank-owned real estate銀行差し押さえ後の物件)
案件が圧倒的多数ということに。(エリアによってタイムラグがあります。)
こうして、多くの市場で、一般に、distressed sales(わけあり、事情ありの売り手案件)と呼ばれる状況が普通になってしまったわけです。
このため、イマドキの不動産業者さんは、いきなり、こうした困窮案件に習熟するか、仕事がなくなるかの究極の選択を迫られるにいたっているところがあるようです。
銀行案件は、多く、手間がかかり、例えば、任意売却の場合は、売り手(名義人)との間に契約が成立した後に、銀行がそれを了承するプロセス。Short sale ですね。
銀行が差し押さえをしたのちの銀行所有もの、BANK REO, bank real estate owned の場合は、通常物件の状況がより悪化している上(滞納後、競売に係り、買い手がつかず、その結果、融資銀行がデフォルト落札したものだから、正式オーナーが滞納や退去してから2年といった歳月がたっている)、向こうからの返事が来るのは、いつかわからず、来たときは、「24時間以内/48時間以内に返事をしろ」といった高飛車な「向こう都合」が続きます。
実際、こういう案件の場合、as is rider のみならず、「決済するまで、本当に売るかは、わからないからね!全部こっちの好きだから!」という念書にもOKしなければならず、合意があっても、確認の問い合わせをしたら、「大手にバルクセール(bulk sale、大量取引)しちゃったからもうないよ」位の結果になる場合もありえます。
いずれにせよ、こういう中、
■要修理OK
■建物建築士が見つけられない瑕疵がある可能性
を前提に取引しなければいけないので、こうした「お得案件」は、どれくらいの予算が必要になるかがわかりにくいのが、ネックでもあります。
こうした中、一般論として、マンションは、室内以外は、管理組合が担当するので、外壁のみならず、敷地内がすべて自分の責任となる一軒家より、リスクは、低くなります。
ただ、投資リターン的にいうと、マンションの管理組合費は、通常一戸建ての場合より高いので、安心できそうな場合は、一戸建てのほうが意味があります。賃貸にまわす場合も、多くの場合、マンションより、一戸建てのほうが、賃貸はしやすいという傾向があります。
さて、ここで、修理と大まかに言っても、その度合いや程度が問題。
修理には、両極のカテゴリーがありえます。
■cosmetic repairs、表面的な修理
■gut rehab、フルリフォーム
前者は、
ペンキ、カーペット、キッチンの戸棚付け替えやバスルームの化粧台手配、壁の穴修理など、表面的なお化粧レベルの修理。
修理という言葉は適当でないかもしれませんが、冷蔵庫や洗濯機、乾燥機などは、米国では、賃貸の場合、貸主、売買の場合、売主がつけることが多いので、こうしたものが、壊れていたり、なかったりしたら、これらの付け替えも必要でしょう。
表面的な修理だけでも、1,000SQFT以上の一軒家なら、すべての部屋で、ペンキ塗り替え、カーペット張替えを行い、清掃などし、ブラインドを付け替え、場合によって前庭に庭師さんを派遣したら、それだけで、1万ドルといった金額になるでしょう。
それに対し、ガットリハブは、壁を壊して中の電気配線や水道管、暖房システムを変えたり、屋根をはがしなおしたり、多くの場合、市役所への届出が必要なレベルの大型リフォーム。こちらは、修理代は、3万、5万ドルといった額で、基本、天井なしです。
地元の玄人にとっては、これをやることで、物件の価値をぐっと値上げさせられるので、多くのフィックスアップ案件は、こっちになることでしょう。
それに対して、遠隔初級投資家にとって、投資着手時には、不動産業者さんも、管理会社さんも、始めて付き合う相手となります。
上に述べたように、こうした業者さんに頼まなければいけないことの範囲が大きいので、そういう意味では、初めての取引で、あまり大きな野望を抱くのが、いかに危険か、理解していただけると思います。
そもそも、修理には、いろいろな業者さんがいます。
■handyman
便利屋さんレベル。自営で、一人で、コスメティックリペアレベルのことを大体やってもらうのに便利。保険等がないことが多く、許可やライセンスが必要なレベルにかかわることは、本来タッチできない。
■licensed な専門業者さん。bonded and insured
電気業者さん(electrician)、水道業者さん(plumber)など、屋根職人さん(roofer)など、個別業者さん。免許が必要な領域の場合、免許を持っており、また、それと別に、業務保険に加入している業者さん
■general contractor
フルリフォーム業者さん、または、監督格の人。専門業者さんなどいろいろな役割の業者さんや職人さんを総括する立場。日本では、ゼネコンというと、一部上場しているような有名大手建設会社を思い浮かべますが、米国では、居宅案件でも、「何でもできる監督さん」程度の意味でも使います。
■管理会社さん
修理の際に、必要があれば、ガットリハブも請負い、ゼネコン的な役割を演じる。通常、自前の人は雇っておらず、現場マネージャーさんが、作業の監督をする形。大家さんとの連絡の担当者とはまったく別の裏方の方です。
ライセンス、保険がない業者に見積りを取ったほうが、当然、安くなります。
しかし、例えば、許可を取らないといけない工事を許可なしで行った場合、賃貸時、売却時にトラブルになる場合がありえます。ここら辺は、市役所ごと、つまりエリアごとに違いますので、遠隔の私たちには、手も足も出ません。
というわけで、現在、多くの銀行案件は、要修理なわけで、地元で采配をしてくれる人に修理監督も任せるしかないわけですが、あまり相手に過度の期待を寄せるのは、禁物です。
2012年現在、多くの方が、米国不動産の「格安状況」「底値環境」に魅力を感じ、投資のチャンスを狙っていますが、現在の投資環境は、完全に、玄人寄り。
ローンの心配だけすればよかったバブル期に比べ、新規エントリーには、細心の注意や予備資金が必要なのです。
英語では、「安物買いの銭失い」のことを、
Penny-wise, pound-foolish
といいます。
初級者の不動産投資は、「儲ける」ことより、「大損を出しにくい」段取りを作るのに注意を払いましょう。
もっとたくさん言いたいことはあるのですが、記事が長くなりすぎました。
6月30日の入門セミナーでは、過去の入門セミナーには必要がなかった、こうした点を、さらにお話できるといいと思います。
また、対米不動産投資視察旅行同行者様には、実際の修理現場をたくさん見ていただきますので、こうした点を、言葉だけではなく、実際に、体感してもらえればと思います。
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