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Upside Down といえば、、、

こんにちわ。秋も深まってくると、なんとなくそわそわしますね。この時期は、宴会なども多くなり、また、年末のプランニングもしなければいけなくなって、皆さん、お忙しくなる時期ではないでしょうか。

今日は、アップサイドダウンという言葉を、検討してみたいと思います。

アップサイドダウン、、、サニーサイドアップ《目玉焼き》の反対ではありません、、、

アップザイドダウンというのは、不動産業界では、通常、下を、意味します。それは、、、


ローン残高が、物件の評価額より高くなっている状態


です。

しばらく前に、WSJに掲載されたある意見記事、Just Walk Awayに言及したことがあります。《こちらから》

日本では、物件の価値がローン残高より下落しても、特段、その状況に、”名前”はつかないような気がするのですが、アメリカでは、これを、


I AM UPSIDE DOWN ON MY MORTGAGE.
物件の評価額が、ローンの元本を割り込んでいるんだ。


といった言い方をよくします。

この前読んだミリオネア研究者トーマス・スタンレー氏の最新刊、Stop Acting Rich《かっこつけるのはやめろ!》でも、ミリオネアは、通常、車を買っているが、浪費家たちは、リースをしたり、車のローンでアップサイドダウンになったりしている、というくだりがありました。

一般に、経済的に困窮してローンが返済できない場合、アップサイドダウンでなければ、物件を売却できるわけで、現在の経済状態において、両方の条件を抱えている人の数が大変増えているため、upside down である場合、walk away するかどうか、という議論が、たくさんあるようです。

銀行と合意に達成することができれば、ショートセール《short sale、銀行と協力し、ローン残高より低い-short-額で売却する。日本で任意売却といっている状況に該当》により、銀行への返済義務を免除されることが多いようです。

他方、二番抵当がついていたりして、二番抵当権者との合意ができなかったりする場合も多いらしく、ショートセールを実現すること自体、なかなか、売主にとっては、大変なプロセスなんだそうで。

そこで、ショートセールが実現しなくても、単に、支払いをストップしてwalk away、物件に対する責任を放棄しよう、というオプションもあるという話ですね。

カルフォルニアやアリゾナなどの一部の州では、限定的に、立法上、銀行が、物件の担保が外れた後の残務追及ができない場合がありえます。これを、nonrecourse state《ノンリコースローンが認められている州》と呼ぶ例があるようですが、実需の一部の方しか対象にならない消費者救済の限定的な立法で、州の方針がリコースローンを許可しないこと一般にあるとは思えませんので、ちょっと言い方が誤解を招いているような気がします。

また、まあ当然なんでしょうが、これらの州では、このため、そういう融資については、手数料が、その分、割高なんだそうです。保険なんでしょう。

ショートセールであれ、単なるwalk awayであれ、銀行に借りたお金の(一部)返済をしないで済ませる場合、IRSは、これを、debt forgiveness《返済免除》であると評価することになります。そうなると、これは、いわば、windfall profitやgift、つまり、一時所得や贈与と同じ扱いで、申告義務の生じる利益なわけです。

なので、気をつけないと、銀行の返済をまぬかれたのに、IRSに多額の課税を課せられ、こちらは、より大変な帰結を生む、という可能性もあります。《時限立法で、こういう場合に、納税義務を免除される特例が設けられているようです。こちらで、過去に言及したことがあります。実際に情報が必要な方は、CPAなどプロに相談をして、最新情報を入手してください。》

家計がぐしゃぐしゃになり、呆然としているうちに、”裁判所から赤紙を張りに来た”という状況が一般的かと思われますが、それに対し、こうしたwalk awayの場合、strategic、つまり、わざと、戦略的に、これをやっていることになります。

ある調査によると、デフォルト案件のうち、こうした「戦略的放棄」は、26%である可能性があるそうです。《WSJ報道参照》概観してみると、データ分析からして、なんだかいい加減な調査のような気がしますので、アンケート的に見るしかないかもしれません。はっきりそういっていませんが、primary home owner《実需/持ち家の場合》についてらしいので、バブル当時、景気のけん引役だった投資ローンについての考察やデータを含めて考えると、不動産ローンのデフォルト件数全体に占める戦略的放棄の比率は、もっと高いのかもしれません。

そういう調査をすることにより、デフォルト率が、過去の認識以上に高まっていることがわかっても、その結果を開示することに、メリットはなさそうな気もしますので、業界内で、より硬い数字が出ていたとしても、それは、政権に対してすら、安易に公開できるようなものではなく、丸秘なのかも。

さて、こうしたwalk away論に対し、さすがのアメリカでも、当然、反対論は多く、あるローンオフィサーのブログでは、「可能な限り、デフォルトはするな!アップサイドダウンでも、踏ん張って景気が戻るのを待て!」と声高に主張していましたので、その論旨を御紹介したいと思います。

その理由は、以上ですでに述べたdebt forgivenessが対象とならない場合などの直近のtactical(戦術的)な問題のほか、主として、このデフォルト歴が、最大10年間、付きまとうからということでした。

一般に、アメリカでは、日本と比べ、融資をデフォルトすることにリスクは、より限られており、一般論として、破産の場合、最短2年、フォークロージャーの場合、最短3年で、別の銀行の何らかの融資を受けられる可能性が残っているそうです《これは、ファニーメイの基準で、頻繁に変更される》。

ただし、このガイドラインは、当然のものではなく、また、融資条件は、いずれにせよ、そうした履歴がない人間より、厳しくなります。

他方、この状況をより慎重な人間が見る場合、「フォークロージャーの記録は、永遠に残る」ことも確かなようです。

その理由は、現在アメリカで居住用物件に対する融資申込み上、統一的に利用されているUniform Residential Loan Application、別名Form 1003にあるそう。

このように、日本と異なり、「進んでいる」(システムだけは?)アメリカでは、融資申込み用紙が、連邦レベルで統一されているわけで、フォーム1003の原本例は、たとえば、こちらになります。

そこでは、当然のことながら、融資決定に大きく関係しそうな自己情報を開示しなければいけないわけですが、「過去のデフォルト/フォークロージャー歴」についての自己開示期間は、実は、無限。

下に、関連箇所の質問事項をアップしてみました。

1fannie.gif

大事なのが、下、e

e. Have you directly or indirectly been obligated on any loan which resulted in foreclosure, transfer of title in lieu of foreclosure, or judgment?

(This would include such loans as home mortgage loans, SBA loans, home improvement loans, educational loans, manufactured (mobile) home loans, any mortgage, financial obligation, bond, or loan guarantee. If “Yes,” provide details, including date, name, and address of Lender, FHA or VA case number, if any, and reasons for the action.)

破産やフォークロージャーを過去7年にさかのぼって回答すればすむかと思わせるbやcに対し、「どんな借金でもいいから、とにかくトラブったことがあるなら、白状せい」と問い合わせる恐ろしい条項。

もちろん、過去に該当しながら、この条項にNoと答えても、すぐ、それがばれるわけではないと思われます。裁判所判決なども、最大10年で記録抹消だそうですから、それ以上たった負債については、プライベートな借金はもちろん、公的は書類が作られている場合でも、記録を追及することは、難しくなるはず。

他方、「万が一、ばれると」、それは、直ちに銀行に対するfraud《詐欺》になり、うそをついて、融資を取得したことになります。

返済が続いている範囲では、問題が露出することはあまりないが、他方、その返済が滞った場合、該当者は、単なる善意の/困窮した一般消費者ではなくなり、銀行は、刑法上の責任追及を含めて、いろいろな救済手段に訴えることができるようになるというわけ。

実際、ある論者は、「現在のディフォルト状況で、自分がwalk awayしていいかどうか考える前に、自分が、融資申込書にうそを書いたかどうかも、考えて見るべきだ。今困っている立場の人の中には、バブル時にイケイケで、ローン取得のため、融資申込書に、いろいろなうそを書いた可能性がある人もおり、その場合は、デフォルト時に、銀行にとことん追及されるかもしれない」と主張していました。

こうした考え方の人々にとっては、「長期にわたって支払いができるのであれば、がんばれば、物件価格は戻るのだから、今、ロスを確定する必要はないよ」という哲学が根底にあります。

不動産関係者ではないですが、ウオーレン・バフェット氏なども、そうした Believe in America 派の一人なのかもしれません。

まこと、アメリカという国は、インフレ(以上のように、自分達は成長と呼んでいる)が国是のようなところで、今日も、FRBがさらなる金融緩和決定を下して、途上国のブーイングを食らったが、開き直っているという補足記事がありました。《こちらから》

”自国通貨圏=ドルインフレが起きれば、問題はすべてが解決する”というわけですね。

圧倒的な軍事力や人材育成力、あらゆる領域における”米国スタンダード”の浸透ぶりに裏打ちされたアメリカ人の自信に対し、歴史がどういった評価を下すかは、正直、only the future will tell、結果論に終わるだけ、かも知れません。しばらく前に、日経で、日本読者に、「20年後の基幹通貨は?」と質問されたアンケートでも、やはり、多数意見は、「米ドル」しかないのかな、というオプションの不透明さが浮き彫りにされていたのには、逆にびっくりしました。こちらから。


私の意見ですか?


私は、長いものに、巻かれる主義ですから!


アップサイドダウンの物件も、プラスキャッシュフローがあるので、アメリカ帝国主義を信奉し、まじめに、《ちょっとだけの繰上げも含めて》返済に励んでおりまする、、、


《←この記事や最後の私の投資行動は、投資アドバイスではありません。現在米国でこのような状況に陥っている方が、自らの具体的な融資について、特定の判断を下されるお手伝いをしているつもりはありませんので、その趣旨をご了承ください。》


補足

Upside down は、時に、I am upside down on my mortgage payments、私の毎月のローン返済額は、家賃収入より大きくて、、、 といった言い方でも用いられます。

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