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ローン返済に対する態度 日米比較とその理由

日本でも、サラリーマン大家さんブームなどで、「自分も、サラリーマンから始めて、上級投資家になりました、そのノウハウをお話します」といった方々が、本を出版されたり、広くご活躍中です。

不動産屋さんと違ったアプローチからの情報ですので、こうした「先輩」のメンターの方々と接する機会が増えているということは、すばらしいことですね。

それに対し、日本人のアメリカ投資だと、そういう、情報交換を日本語で活発する場というのは難しいです。私などは、ささやかながら、自分の経験を公開したりしていますが、アメリカも、地方によってまったく異なりますので、私がご提供できる情報というのは、異なるエリアに投資をされる方にとっては、「対米投資入門概論」くらいの位置づけに限られます。

英語ができる方は、アメリカ人のフォーラムに参加されるのも手ですが、実は、気をつけなければいけないのが、それだけでは、片手落ちだということ。

というのも、アメリカ在住でアメリカで投資をされる方と、日本在住で日本から投資をされる方では、まったく、アングルが異なっているからです。

どう違うか、が、8割わかるくらいまでになったら、すでに、初級投資家の域は、脱していた、ということになるでしょう。

ローン返済に対する態度についても、日米の態度の違いがあり、それにそれなりの背景があるということを認識していると、「日本と同じ態度で投資に挑む」ということは、なくなるかもしれません。

こんなことを書いているのは、先だって、日本のあるアパート経営の大家さんの方のレポートというのを拝見したことがきっかけ。

その方は、「サラリーマンが新築アパートを始める場合、10年後のリスクが一番大きいので、最初の10年は、まずは、収益にまったくタッチせず、ひたすら、繰上げ返済をしなさい」とアドバイスされています。

日本のサラリーマン大家さんが、全員そうされるべきか、すべてのアドバイザーがそう指南されるかはわかりませんが、この指摘は、一般には、やはり、相当の普遍性があるだろうと私も思います。

日本では、一番高いのは土地で、サラリーマン大家さんが物件を買うときは、通常、土地自体もローンで購入します。つまり、最初から地主型大家さんとは、利回りが違うのですね。返済予定額も、相当多く、利潤も、地主さんより、低いです。

しかし、物件は、同じ条件で償却していきます。一般に、最初に経営に乗り出す新築アパートというのは、木造の場合もあるかもしれません。RCであっても、転売するとなれば、10年たった物件の評価は、微妙かもしれません。取り壊しは、むしろ、コスト高ですから。ですので、いずれにせよ、日本の新築小規模アパート経営は、通常、転売益ではなく、あくまで、(ローン返済後の)キャッシュフローのためにやるわけです。

しかし、日本では、10年以上たった物件というのは、通常、ある程度のリフォームを経ないと、10年前後から収益性が落ちてきがちだといわれているのですね。だから、最初の10年、「大家業って、おいしい!」と思うかもしれないが、それは、最初だけで、11年目から、真の修行が始まるのだから、最初の10年を、「キリギリスとして生活」するなよ、この10年は、「まだ、あなたは、アリなんです」という教えなわけです。

図式的にまとめなおすと、日本では、繰上げ返済というのは、自己防衛的な有益な投資戦略だと認められているのだと思います。

それに対し、アメリカでは、「10年たったら、家賃って、下がるんでしょう?」と質問したら、逆に、「??」となるかもしれません。みんな、「インフレがあるんだから、そんなわけないよ」と堂々と答えます。不況時には確かに家賃額で妥協することが多いですが、それは、築年数が古いことから生じる相場とはいえません。

もちろん、「そのエリアの賃貸物件に普通なアメニティや随時リフォームを施さないで、家賃が上がる」わけはありませんが、アメリカでは、追い炊き機能やウオッシュレット、宅配ボックス設置などの「女性が喜ぶテク」のような最新ニーズは、まったくないのです(だからアメリカに乗り出して日本型賃貸を見せてやる、という方は、ぜひがんばってください。相当な年月や資本をかけて努力すれば、都市部では、それなりに、ブランド化するかもしれません)。

むしろ、アメリカ投資で覚えておくことは、10年後、20年後、または、60年後でも、多分、転売したければ、買主には、銀行ローンが組めるだろうということ。上物評価が、日本のようにゼロにならないのです。

不況エリアでは、確かに、デトロイトのように、「本来新築であれば、10万ドルかかる家が、築50年で、3万ドルで買えた」といったことがおきますが、こうした家だって、わずか数年前のバブル時には、8万ドルで普通に売れていたわけですから、バブルが待ち焦がれるとは言いませんが、将来の実需需要を見越し、「これから、さらに、10年後、築60年になっていても、5万ドルで売れるかもしれない」と期待しても、別段、非現実的とは、本当にいえません。

むしろ、デトロイトは、経済衰退エリアですから、アメリカの不動産投資にとっては、鬼子であり、普通、皆さんが、希望されるニューヨーク市や、ハワイのような「資産形成」エリアなら、「10年前に買った家が、フツーに3倍」が標準期待値。私たちの対ラスベガス戦略だって、エリアの人口動態を見ながら、それに準じたキャピタルゲインを狙う戦略です(これらの都市ほどはメジャーではないので、同ランクの高騰までは難しいと思いますが)。

こういう土壌では、ローンの早期返済は、「どうして?」「意味なし」「不利です」と100%、ダメだしされるでしょう。

インフレがあれば、今1ドル借りたら、それを返すのは、先なら先なほど、得をします。

その間、家の資産価値は、丁寧な管理(日本だってクロス張替えなど、価値は下がっていく物件に対する修理代は、アメリカと、あまり変わりません)で、きちんと守るのです。

このためには、早期返済より、毎月の支払い額を減らし、「空室やリフォームの費用をねん出する」ほうが、対米不動産の資産形成戦略の場合は、一般に得をするのですね。(お断りとして、アメリカのレジデンシャル物件と、日本のアパート物件の例を比べているので、ちょっと、そこは、雑な比較ですが、趣旨はお分かりいただけると思います。アメリカでは、5室以上の商業案件投資は、敷居がぐっと高くなりますので、日本人サラリーマンランクの投資家には、現実味はないと断言していいと思います。私自身も、経験値がないので、当面、やりたくないです)

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イマドキの不況時には、ローンを組もうとしても、金融緊縮があるので、私は、デトロイト現金投資を案内しているので、現実の投資話は、上の基本編に加え、ややこしいものですが、そもそもの出発点は、大きく異なりますので、そこの点を、正確に理解しておくことが、肝要です。

両方やっている人の場合、


1)日本の物件は、よほどエリア人気が根強くない限りは、繰上げ返済がデフォルト
2)アメリカは、繰り延べ返済が可能なら、それも検討する(リファイナンス)ことが、デフォルト

その上で、

3)正反対の出発点から、しかし、そこから、個別に、自分の物件を検討することにより、最終的な結論を、物件ごとに、出していくべきなのです。

もちろん、アメリカでも、オーバーローンにしていたり、マイナスキャッシュフローが続くような投資では、やはり、追加資金投入で、物件収支を安定させる必要があります。


ちなみに、この記事に関連し、

アメリカの戸建不動産の資産価値を1940年からとった歴史的統計は、こちらから。これは、上物とと土地を両方含め、しかも、新築と中古を区別しない統計です。アメリカでは、「上物にメインの価値がある、中古も、新築に比べ、それほど価値が落ちない」という出発点があるので、こういう統計のとり方をするのです。

それに対し、日本の戸建物件は、一般に、30年たつ間にゼロに償却され(こちらから)、日本の土地価格は、20年たっても、変わらず(こちらから)、戦後日本の消費者指数は、40年で4倍になっています(こちらから)。

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