米国の銀行って楽じゃない? 最新ScamはShort Sale Fraud(任意売却を装った詐欺)!
ショートセールは、日本で言う、任意売却かと思います。
もちろん、個別の手続きは、違うので、まったく同列には並んで理解できません。ここでは、任意売却という言葉を、表面的に、「銀行に対するローンが払えないような状態になり、銀行の合意で、融資残高より安く、売却に出すこと」としておきます。
例えば、違いのひとつとして、日本では、任意売却ものは、レインズ(REINS、不動産業者さんの仲介のためのシステム。不動産流通標準情報システム)には、ほとんど出てこないと思います。
しかし、アメリカでは、数が多く、「ショートセール」という注意書きを持って、MLS(レインズのモデルとなった流通のための情報システム。但し、不動産協会が運営しており、日本のように役所は関知していない)に掲載されます。
ショートセールの場合、第一抵当権者のほか、第二抵当権者(場合によったら第三)がいることもあり、MLSに掲載される段階では、第二以降の抵当権者との最終合意はなく、価格設定は、アバウト。
このため、格安で価格が掲載されていることがありますが、これは、入札希望価格程度で了解しておかないと、馬鹿を見ることが多いです。過去には、そのような記事を書いたこともあります。エリアによるので、希望投資エリアで、ショートセールに強い不動産屋さんに相談して、決めていくしかありません。
さて、今回は、このショートセールが、不動産詐欺の温床となっている、という話。
最近の米国不動産市場は、こんな話ばっかりですね、、、
どういう詐欺かというと、ずばり、例によって、銀行を食い物にする話。
イメージとしては、下のような感じらしいです、、、
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別段、ローン返済には困っていないA。しかし、自分の周囲で物件価格は値下がりし、不満がたまる。そこで、ショートセールに詳しい不動産グルーの話を聞くと、
「バブルのとき買った物件なんか、格安ショートセールで、売ってしまい、ムダな負債返済はやめろ!」
という。
そこで、ローンの支払いをやめて、ショートセールを銀行に申し入れする。グルーが窓口になって、ネゴしてくれたので、20万ドルの融資を受けているところ、14万ドルでの売却にOKが出て、自分も、差額は、免除してもらえることになった。
物件の価格は、本当は、16万ドルで、売れそうだが、「14万ドル」は、グルーの仲間の不動産屋さんが、相場評価を低めに算出してくれた数字。買い取り先は、グルーの作ったナンチャッテLLC。直ちに、その不動産屋さんが、16万ドルで、一般のバイヤーを見つけてきて、差額は、仲間で、分け合いました、、、
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一昔前だったら、融資額と売却価格の差額6万ドル(話を単純化するため手数料の話は省く)は、銀行の支払い免責を受けてしまうと、国税庁から、「贈与」と判断されました。
しかし、その後、この金融危機で、この問題を解決するための連邦法案が成立し(こちらから)、細かい最新情報はフォローしていませんが、原則、逃げ切りに近い状態になっているよう。
場合によったら、「ショートセール」と振りかざすことで、連邦のemergency funds(緊急対策補助金)なども引き出せるのかもしれません。
現在、銀行は、ショートセールに応じろ、消費者を救済せよ、とプレッシャーをかけられており、その結果、「便乗の故意に基づく詐害行為たる、自作自演の”なんちゃって”ショートセール」が関係者を震撼させている、という話。
一時は怖いものなしだった”不動産投資家”、”不動産グルー”たちも、まともなネタは尽きたっていう感じのこの市場。
イマドキ、正直、名前のある人が、看板を張っている場合でも、米国の不動産投資セミナーで、「おいしい話」は、結局、裏では、こういう話になっていたりすることが多いので、米国在住の方は、気をつけてください。私自身、過去に、グルーが名前を貸している(だけと信じてあげたいところですが、正直、クエスチョン)投資ビジネスのやり方に、警鐘を鳴らしたことがあります。
ウオールストリートジャーナルの意見記事にも、融資額割れした物件オーナーは、Walk Away して楽になりなさい、というアドバイスが出てくるご時世ですから、「どこからが、本当のショートセールで、どこからが、虚偽か」という難しい問題は、出てくることは確か。
FBIによると、「本来、融資銀行の合意があるため、詐害行為かどうかが、わかりにくい」が、
“Any material misstatement, misrepresentation, or omission relied upon by an underwriter or lender to fund, purchase, or insure a loan.”
ローン取得の場合の、資金提供、物件購入またはローンに保険をかけるにあたり、アンダーライターまたは銀行に対する重要な事実に関する虚偽発言、虚偽表示、または、事実隠匿があった場合
が、対象に当たるということで、さすがお役所、ぜんぜんわからない。
フレディーマックのFraud Investigation Unitによると、具体的には、指針は、以下のとおり。
■融資取得者が、過去に滞納歴等がないのに、急に滞納をはじめ、失業等の明確な理由がない
■融資取得者は、他の支払いはきちんとしている(クレジットカードなど)
■融資取得者の直近の与信状況は、支払い、貯蓄、クレジットカード利用につき、一般の滞納者と異なるパターンを見せている
■融資取得者から物件を購入するのが、法人である
■物件購入法人との契約書には第三者への転売への売主合意がある
こまかっ!
こうなってくると、なんとなく、銀行に同情をし始めそうになる単純な私。アメリカの銀行は、本当にばんばんつぶれていますから、、、
バブルの時には、不動産鑑定人(real estate appraiser)が、「高め評価を出した」と、評判を落としましたが、ショートセールは、鑑定のコストを節約するため、不動産屋さんが、BPO(Broker's Price Opinion)という評価額を算出すれば、それを使っていいことになっており、今度は、全米不動産協会が、「最近、お前ら、荒っぽい商売やってるんじゃないか」と、槍玉にあがっています。
今後、「親戚に、物件を売れない」、「購入者は、3ヶ月以上、転売できない」という規制が厳格化していくということ。いたちごっこは、どこまで続くのでしょうか。
ミーハーな私は、FBIの行動分析課をフィーチャーしたテレビドラマ、《クリミナル・マインド》のファンなんですが、FBIの不動産詐欺ユニットの戦いは、人気テレビドラマには、、、ならないでしょうね、、、
いや、never say never(絶対ないとは絶対言わないで)!
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